東日本大震災以降、15年にわたり大船渡市を訪れ、グリーフケア講演を通じて被災地の人々に寄り添い続けてきた髙木慶子先生。
今年、大船渡市主催の講演が一つの区切りを迎えるにあたり、ヒロキャリアスタッフ本社にてお話を伺いました。
15年間の活動を振り返って感じること、大船渡の街や人々への想い、そしてこれからの時代に求められる「人と向き合う姿勢」について、髙木先生の言葉をお届けします。
※「グリーフケア」とは、大切な存在との別れに伴う深い悲しみ(グリーフ)に寄り添い、心が少しずつ前を向く過程を支えるケアをいいます。
今回の大船渡でのグリーフケア講演が最後とお聞きしました。今のお気持ちをお聞かせください。

2024年の講演の際、13年目の時に私は「もうこれで終わりましょうか?」と申し上げたかったけれど、まだ時期的に早いかなと感じる部分がありました。頼んだ方のほうから「これで終わりにしましょう」ということはなかなか言いだしにくいものです。だから私の方からお伝えしたほうが、相手も言い出しやすいと思ったので、15年を一区切りにして「15年になったら、もうこれで最後にいたしましょう」ということを私から申し上げました。
人間の心の痛みというものは、15年では思うようには回復しないんです。ですが、けじめとして15年を一つの区切りにしようと考えました。
東日本大震災での行方不明の方がまだ2000人いらっしゃるということを伺ってますが、私も今年90歳ですし、一応ここで最後にと考えました。
だからといってもう岩手にも大船渡市にも来ないっていうわけではありません。
例えば臼沢さんとか大船渡の方々が「高木先生を呼びましょう」と言ってくださったら、いつでも来ます。なので、今までの大船渡市が呼んでくださって開催していた講演はこれで終わるというだけ。あとは個人のレベルで今後も引き続きお付き合いができると思ってます。
15年前と今で大船渡の街や人に変化はありましたか?髙木先生が感じたことがあれば教えてください。

私は、大船渡と陸前高田の震災前の街を知りませんから、どうなのかわかりませんが、今見て感じることは、何しろ人が少ない。建物は立派。
本当の復興は、人が帰ってきて賑やかになって、人間が住んでいる町なんでしょうけど。今の大船渡は「人々が作っている町だ」という匂いはまだしない。
まだ、作られた街という印象。作られた街を、人々が自分たちの街にする営みがまだ十分ではないんだと思います。
これはとても大事なことです。
人々が作る町と、作られた町は違うんですよ。自然と、人々が家を作っていってそこで生活して出来上がった町と、誰かが意図的に作った町に人が住んでいくというのは街の印象が違いますね。それは匂いで分かる。皮膚感覚でわかるんですね。
数々の震災を見てきて、災害後の人々の変化は、本当に共通点があるなと思います。
東日本大震災の後、災害直後の1、2年は、本当にみんながとっても仲がいい。そして、元気に動いている。その後に沈んだような場面があるんですが、10年ぐらいでまた元気になってきてらっしゃるなというのは感じます。
阪神淡路大震災もそうですし、他の震災もそうなんですが、やはり最初の頃はね、もうなんていうのか、躁状態になるわけね。被災した方々同士が同じ体験をしたということで、活気があるように見える。その後に落ち込む時期がくる。
格差を感じるんだと思います。格差を感じるまでに6年、7年かかるんです。それを経過し、現在はだいぶお元気になってらっしゃるのかな、という感じがします。
復興事業を通じてヒロキャリアと髙木先生のお付き合いが始まりました。今後ヒロキャリアに求めること、働く社員やスタッフに求められることを教えてください。
ケアの分野でつくづく思いますのは、対面で、人間にしかできない部分のレベルを上げておかないといけない。「相手に対する尊敬と信頼」を忘れてはいけないということです。
自己満足ではなく、相手が満足するような人間になるように努力をする、人間の質をあげていかなければいけない時代です。
現在は子供たちがAIを使うようになり、子供たちのレベルがあがっています。私の研究所に入学してくる方も人間としてレベルがあがっています。社会人であってもそうです。
そのような、いろいろな分野のレベルが上がっていることを、みなさん敏感に気づいていかないといけない。
私たちは人間を相手にする職業ですよね?AIには限界があります。
自分自身を良く知り、私たち人間がAIを使いこなす。ロボットにできることはロボットに任せればいい、人間がやっていかなければならない部分は、人間が責任をもってやっていくということです。その分野のすみ分けを、はっきりと私たち自身が知っていること。そういうことが、会社経営においても、自分自身が今後の社会を生き抜くためにも、とっても大事なことだと思います。
今は、女性の社会だとも言われてますでしょう?
女性の今まで隠れていた能力を、今日本の社会が発見し始めた時代なんですね。
そして女性だけではなく男性も、今まで隠れていた能力を発揮するという意味では「AIを使い切る」ということも、隠れた能力の発見だと思うんですよね。だから私たちは新しいものを発見する時代に存在していると思います。
またもう一つ大切なことは、皆さんの特徴を明らかにすること。「これははずせません」ということを明らかにすること。それらに基づいてAIを使用する。
今、世の中の社会人の質がほんとうに高くなっていると感じます。
私たちケアに当たっているものとして、自身の質をどんどん上げていかないといけない。この時代だからこそ、そう強く感じます。

PROFILE
高木慶子 先生
熊本市生まれ。高木仙右衛門の曾孫。聖心女子大学文学部心理学科卒業、上智大学神学部大学院修士課程修了。2004年「高木仙右衛門に関する研究 「覚書」の分析を中心にして」で英知大学博士(宗教文化)。
神戸海星女子学院短期大学講師、英知大学助教授、教授、2007年定年退任、聖トマス大学名誉教授(校名変更により)。上智大学グリーフケア研究所特任所長。上智大学特任教授。「生と死を考える会全国協議会」会長。
「兵庫・生と死を考える会」会長。援助修道会会員。ターミナル(終末期)にある人々のスピリチュアルケア、及び悲嘆にある人々の心のケアに携わる。

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髙木慶子著書
『「ありがとう」といって死のう』
私たちには、いつか必ず死という悲しい瞬間がやって来ます。
自分の死という悲しい出来事を「こんにちは、ありがとう」といって
受け入れられれば、平穏にこの世とお別れすることができます。
そのためには、人生の「秋」、年齢でいえば55歳を超えた頃から、
人生の「冬」を迎える準備をする必要があるのです。
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